サテライトオフィスは昭和の香り

 もう30年ほど前ですが、当時住んでいた隣町に電話局☎がありました。
 郵便局〒はいまでも人々の暮らしに欠かせない存在ですが、「電話局」という言葉は、いまやほとんど死語ですね。たまに交差点などで「○○電話局前」といった地名を見かけると、どこか懐かしく感じます。
 当時はまだ携帯電話やインターネットが黎明期で、アナログ回線や黒電話も現役。一方で、電話局の交換機はアナログからデジタルへ移行しつつあり、交換機1台あたりの収容回線数が飛躍的に増えたことで、全国津々浦々にあった電話局は、その役割を徐々に失いつつありました。
 そのため当時の電話局は、存在感を保とうと懸命に営業努力をしており、街道沿いの目立つ立地にあった隣町の電話局も、店頭に電話機やテレホンカードののぼりを立てて、販売に力を入れていました。
 当時の私は、通勤に片道1時間以上かけており、勤め先が電話系のグループ会社だったこともあって、車でその電話局の前を通るたびに「勤務先がここだったらいいのになぁ」と思ったものでした。
 とはいえ、会社自体が電話事業をしていたわけでもなく、時代も旧国営企業の分割・民営化が進む最中。
 その可能性はゼロに等しいと思っていました。

――それから月日が流れて。
 コロナ禍によってリモートワークやサテライトオフィスが急速に普及しました。
 そして今年、勤め先が大株主によるTOBで完全子会社化。
 さらにこのたび、その大株主が遊休資産である電話局の局舎をサテライトオフィスとして活用することになり、なんと、あの隣町の電話局が利用できるようになったのです。
 まさか、あそこで仕事ができる日が来るとは――まさに隔世の感があります。
 というわけで、その隣町の旧電話局を活用したサテライトオフィスがどんな場所なのか、お試しで行ってみることにしました。
 まずオンラインで利用申込をしてみると、受付メールはすぐ届いたものの、そこには「利用開始まで2〜3週間お待ちください」との記載が。
 いまどき銀行口座だって即日開設できるというのに、受付から利用開始まで2〜3週間とは一体どういうことかと、少々嫌な予感がしました。
 そして本当に3週間後、ようやく利用開始通知と入館用ICカードが郵送で届きました。
 利用案内を見ると、フリー利用はできず事前予約が必要とのこと。
 ここでも「はて?」とは思いつつも、オンラインで予約して現地へ向かいました。
 昔の記憶を頼りに店頭へ行ってみると、そこはすでにコンビニに。
 周囲を見回してもビルの入り口らしきものが見当たりません。
 再度利用案内を確認すると、ビルの裏側に入り口があるとのこと。

ビルの裏側
――いや、これは絶対にわかりません。
 画像中央の赤いポストに小さく社名が書かれているだけで、利用案内を読んでいなければ気づく人などいないでしょう。
 恐る恐る中へ入ると、嫌な予感は的中。
 建物の外側だけでなく内部も全くリノベーションされておらず、昭和のままの佇まい。
 社会インフラとしての堅牢性を優先した構造で、窓の少なさも、照明の暗さも、かび臭い匂いも、まるで昭和にタイムスリップしたようです。
 奥の旧式エレベーターで上階へ上がると、サテライトオフィスがある一部のエリアだけがリノベーションされており、ようやく比較的現代風の雰囲気に。
 ただし、電源とWi-Fiこそあるものの、複合機も会議室もなし。ましてやフリードリンクなど望むべくもなし。
 ディスプレイは24インチとやや小ぶり。ブースは6席のみ、同時利用は6名まで。同伴者の立ち入りは不可。
 うーん……。
 先月利用した「Share Lounge」のようなイメージが頭に残っていたせいか、そのギャップに戸惑いを隠せませんでした。

 そして翌日。
 最寄り駅まで歩いていると、偶然にも新しいコワーキングスペースを発見。
 イルミCafeWorks
 なんと、事前予約不要のドロップインで、フリードリンク付き、しかも利用料金は220円/30分。
 本当ですか?と思わず疑いたくなるような価格設定。
 外観も内装もオシャレで期待できるので、こちらも近日中に試してみようと思います。

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