10種類の所得区分を一発で記憶する方法

 所得税の確定申告が始まりました。
 所得税には「10種類の所得区分」があり、それぞれの区分ごとに、収入から所得を計算する仕組みになっています。
 個人の経済活動は、時代の変化とともに多様化しており、最近では暗号資産の売買による収入や、インフルエンサーのSNS収入なども一般的になってきました。
 そうした古今東西あらゆる経済活動を、たった10種類に分類しようとするのですから、これは相当難易度の高いことだと思います。
 実際、所得区分の判定を巡る裁判例は枚挙にいとまがありません。
 その10種類の所得区分の概要は、以下のとおりです。

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1.利子所得
 預貯金や公債・社債など、金銭の貸付によって生じる利子による所得です。
 利子所得は「リスクのない収入」と整理されており、所得計算上の控除がありません(収入=所得)。
 そのため、確定申告書第一表でも、利子所得には収入欄がなく、所得欄のみが設けられています。
 なお、個人間の貸付による利子は、貸倒れ等のリスク負担(必要経費)があるため利子所得には該当せず、雑所得または事業所得となります。

2.配当所得
 法人への出資(株式)や投資信託など、投資のリターンによる所得です。
 投資にはリスクが伴うため、所得計算上「配当控除」が設けられています。
 また、法人が負担した法人税と、株主が負担する配当所得に対する所得税とで、二重課税とならないよう一定の調整がされています。
 配当所得は原則として総合課税ですが、上場株式等の配当については、租税特別措置法により申告分離課税を選択することができます。

3.事業所得
 自己の計算と危険において、独立して営まれる事業から生じる所得です。
 所得税法施行令第63条では11種類の事業を例示したうえで、12号において「前各号に掲げるもののほか、対価を得て継続的に行う事業」と規定されています。
 つまり、所得税法において「事業」の定義は、必ずしも明確にされているわけではありません。

4.不動産所得
 不動産、船舶または航空機の貸付による所得です。
 所有者の労力の継続的な投入が不可欠とはいえない点が特徴で、いわゆる「不労所得」として、担税力は高いと考えられています。

5.山林所得
 5年を超えて保有した山林(立木)の伐採・譲渡による所得です。
 長期間にわたる育成期間を考慮し、他の所得と分離して計算されます。
 税負担を軽減するため、「5分5乗方式」や、最高50万円の「特別控除」が適用されます。
※ 5分5乗方式:( 課税山林所得金額 ×5分の1× 税率 ) × 5

6.給与所得
 雇用契約に基づき、使用者の指揮命令のもとで提供した労務の対価として、使用者から受ける給付です。
 事業所得が「自己の計算と危険において独立して営まれる」労働の対価であるのに対し、給与所得は、自らリスクを負わない従属的な労働の対価といえます。

7.退職所得
 給与所得者が、退職により一時に受ける給与です。
 人生最後の給与とも言える性質を持ち、老後生活の原資となる重要な資金であることから、担税力は低いと考えられています。
 退職所得控除後の金額の2分の1のみが課税対象となり、分離課税により、他の所得と合算されて高い累進税率が適用されることを防いでいます。

8.譲渡所得
 土地や株式など、時の経過と共に価値が変動する資産の譲渡による所得です。
 現金や金銭債権は価値が変動しないものと考え、その譲渡は原則として所得税ではなく贈与税の対象となります。

9.一時所得
 上記8つのいずれの所得区分にも該当せず、営利を目的とする継続的行為から生じたものではない、一時的な所得です。
 懸賞の賞金、馬券の払戻金、生命保険契約による一時金、法人からの贈与(個人からの贈与は贈与税)などが該当します。

10.雑所得
 上記9つのいずれにも該当しない所得は、すべて雑所得になります。
 公的年金等も雑所得に含まれ、課税対象です。
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 これらの所得金額を合計した「合計所得金額」から、以下のような控除が差し引かれます。

  ・基礎控除(一律48万円 → 令和7年分から最大95万円)
  ・社会保険料控除(国民年金保険料や国民健康保険料など)
  ・生命保険料控除
  ・配偶者や扶養などの人的控除
  ・医療費控除
  ・寄附金控除

 これらの控除後の金額に、累進税率を乗じて所得税額が計算されます。
 なお、退職所得は原則として源泉分離課税のため、確定申告は不要です。
 また、山林所得も分離課税であり、他の所得とは異なり、確定申告書第三表(分離課税用)を用いて申告します。
 所得税だけでもこれだけ複雑で、この他に法人税や消費税、相続税・贈与税があり、さらに固定資産税や事業税、住民税といった地方税もあります。
 税制というものがいかに複雑か、改めて実感します。

 しかし、所得税の10種類の所得区分は、一瞬で記憶できる方法があります。
 「イメージ記憶法」と呼ばれる、脳の長期記憶領域に情報を力技でブチ込む記憶法です。

利子、配当、事業、不動産、山林、給与、退職、譲渡、一時、雑
→ り、は、じ、ふ、山、きゅう、退、じょう、い、ざ
→ り、きゅう、は、い、ざ、ふ、じ、山、じょう、退
→ りきゅうは、いざ、ふじ山じょう(に)、退(く)
→ 利休は いざ富士山上に 退く

 いかがでしょうか。
 この絵を思い出すだけで、10種類の所得区分をすべて言えるようになります。
 絵は普通のものではなく「より奇異な絵面」の方が、深く記憶に刻まれ易いです。
 私はこの方法を駆使して、税理士試験に合格しました。

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