法人と個人事業主の会計処理の違い


 令和7年分の所得税の確定申告期間が終わり、桜の季節になりました。
 開始時はLINE通知やネット広告で賑やかに情報が流れてきますが、終了時は特にリマインドやカウントダウンもなく、気づけばひっそりと終わっていた――そんな印象です。
 私自身、これまで法人の会計実務に長く携わってきたため、今回あらためて個人事業主の会計に触れる中で、多くの気づきがありました。
 そこで今回は、法人と個人事業主の会計処理の違いについて、実務上のポイントを中心に整理してみます。


1.受取利息の仕訳

 まずは、最も基本的でありながら、実務上のインパクトが大きかったポイントです。
 法人の場合、普通預金に利息が付いた場合は、以下のように処理します。
   普通預金 100円 / 受取利息 100円
 さらに、源泉徴収された税金も仕訳が必要です。(所得税15%+復興特別所得税0.315%)
   法人税等 18円 / 受取利息 18円

 一方、個人事業主の場合は処理が大きく異なります。(参考:弥生会計
   普通預金 100円 / 事業主借 100円
 個人の預金利息には20.315%の税金(所得税・復興特別所得税・住民税)が源泉徴収されますが、源泉分離課税のため、追加の仕訳は不要です。

 この違いの背景には、税制の構造があります。
・法人税:所得を区分せず一体で課税
・所得税:所得の種類ごとに課税
 このため、個人の預金利息は「利子所得」として、事業所得とは切り離して扱われます。


2.事業所得の範囲

 では、個人事業主における「事業所得」とは何か。
 所得税法の規定は、実は非常にシンプルです。

(事業所得)
第二十七条 事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

 つまり「事業所得とは、事業から生ずる所得である」ということで、本法ではその定義を明確にしていません。
 施行令では、不動産所得に該当するものを除いたうえで、農業や製造業などを例示し、「対価を得て継続的に行う事業」としています。
 したがって整理すると、
・不動産所得・山林所得・譲渡所得は除外
・それ以外で「対価性+継続性+事業性」があれば事業所得
 となります。
 ただし「事業性」については明確な線引きはなく、判例でも「社会通念に照らして総合判断」とされています。
 言い換えると、社会情勢や個別の事例に応じて判断されるため、あえて定義を曖昧にしている領域とも言えます。


3.所得区分ごとの会計処理の違い

 受取利息以外でも、個人と法人では処理が大きく異なります。
 代表的なものを整理します。

(1)配当所得

例:上場株式等の配当金収入
 個人:事業主借(配当所得)
 法人:受取配当金(営業外収益)

(2)譲渡所得

事業用の土地や家屋の売却であっても、個人では譲渡所得になります。
 個人:事業主借(譲渡所得)
 法人:固定資産売却益(特別利益)

(3)一時所得

表彰による賞金などは継続性がないため一時所得です。
 個人:事業主借(一時所得)
 法人:雑収入(営業外収益)

(4)不動産所得

事業とは別に不動産所得がある場合は、区分管理が必要です。
5棟10室基準」を満たしても、あくまで不動産所得である点に注意が必要です。
 個人:事業主借(不動産所得)
 法人:売上高または雑収入(営業外収益)

(5)山林所得

例:米作を営む個人事業主が、所有する裏山の立木を売却
 個人:事業主借(山林所得)
 法人:売上高または雑収入(営業外収益)

(6)給与所得・退職所得

 個人事業主が、従業員として従属的な役務提供による給与所得や退職所得を得た場合は、事業所得と切り離して管理をする必要があります。
 法人の場合は、顧客の指揮命令下で行う従属的な役務提供(いわゆる人材派遣的な形態)であっても、売上高として処理されます。
 個人:事業主借(給与所得/退職所得)
 法人:売上高または雑収入(営業外収益)

(7)雑所得

例:FX取引など
 個人:事業主借(雑所得)
 法人:雑収入(営業外収益)


4.まとめ

 こうして整理してみると、
・個人は「所得区分」が中心
・法人は「会計処理」が中心
という構造の違いが、実務に大きく影響していることが分かります。
 日常的に頻出するのは受取利息程度かもしれませんが、資産の売却(譲渡所得)などは金額的にも影響が大きく、特に留意が必要です。
 今後も、個人と法人の違いについて、実務を通じて理解を深めていきたいと思います。

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